
「日本政府は十分な備蓄があると言っているのに、なぜうちの会社には資材が入ってこないのか?」
今、製造業や建設業、住宅設備を扱う現場から悲痛な声が上がっています。政府の「安心してください」というアナウンスと、実際の企業の動き(受注停止や資材高騰)の間に見られる激しいギャップ。この乖離はなぜ起きているのか、その構造的な3つの原因と、いま現場で起きている本当のリアルを分かりやすく解説します。
原因1:「燃料の備蓄」はあるが「化学原料(ナフサ)の備蓄」がないという盲点
政府が「数ヶ月分の備蓄がある」と発表しているのは、石油備蓄法に基づく「原油」や、ガソリン・軽油といった「燃料」が対象です。
しかし、プラスチックや塗料、建材などの原料となる「ナフサ(粗製ガソリン)」は国家備蓄の対象外となっています。
民間の在庫バッファーはわずか20日分程度しかありません。そのため、中東情勢の緊迫化や海外からの輸出制限といった外部ショックの影響をダイレクトに受けてしまい、政府の「原油はある」という言葉とは裏腹に、真っ先に現場のナフサが枯渇する事態に陥っています。
原因2:「川上」と「川下」の断絶。1つの添加剤不足で全てが止まる
石油化学業界のトップ(川上)が「代替調達を確保している」と説明していても、私たちの手元に届く「川下」の段階で目詰まりが起きています。
ナフサからプラスチックや樹脂、塗料用の溶剤(シンナーなど)が作られるまでには、多くの加工プロセスを経由します。
• 政府・大手の見方: 全体の調達トータル量は維持できている。
• 現場のリアル: 製品を作るための「特定の添加剤」や「特定の溶剤」が1つでも入らないため、最終製品(住宅設備やパーツ)が組み立てられない。
大手住設メーカーの一部受注停止や納期未定が相次いでいるのは、この「わずかな部材の欠品」によるものです。
原因3:不安が呼ぶ「在庫の囲い込み」と「偏在」
「ナフサが足りなくなるかもしれない」という情報が流れた結果、資金力や購買力のある大手企業や流通業者が、生産ラインを止めないために防衛的な「囲い込み(通常以上の在庫確保)」に動きました。
その結果、市場に出回る流通量が急激に細り、大手系列ではない中小・零細企業(地域の塗装業者や町工場など)にまったく資材が回らなくなるという「在庫の偏在」が発生しています。全体量はあっても、必要な場所に届いていないのです。
実際のところ、いまどうなっているのか?
結論から言うと、「日本全体でナフサが消滅したわけではないが、中小企業や特定の業界では、オイルショック級のリアルな調達危機と価格高騰が起きている」 のが真実です。
• 住宅設備・リフォーム: 一部メーカーの受注停止や納期調整で、工期遅れが多発。
• 塗装・建築資材: 塗料に必須の溶剤価格が猛騰し、中小業者の経営を直撃。
• 自動車・製造業: 樹脂・ゴムパーツなど「1点の欠品」による減産リスクとの闘い。
政府もこのギャップを埋めるべく、追加の備蓄放出や中小企業への優先供給要請などの「目詰まり解消」に動き出していますが、現場に届くまでにはまだ時間がかかる見込みです。

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